当会関西本部では、去る6月21日に阪急京都線で非協力(任意確認)乗車会を実施いたしました。
以下、参加したメンバーからの報告です。(実施区間:阪急梅田~高槻市間往復)
ウソで成り立つ女性専用車両
「視覚障がい者は男性単独で乗れるが、それ以外の障がい者男性は女性同伴でないとダメ?」
いいえ、「全ての男性が無条件で乗れます」
阪急梅田~高槻市(往路)
今回は阪急梅田駅から、京都線の通勤特急で高槻市まで行き、そこで一旦下車した後、再び梅田に戻ってくるルートとした。
梅田20:00発、通勤特急・京都河原町行きに乗車するため、私達は発車10分前くらいからホームの女性専用車乗車位置に並び、列車を待つことにした。
列車を待っていると、じろじろとなめ回すようにこちらを見る女性客が一人・・・
「女性専用車両」という名前がついていても実際には任意協力であり、「女性専用と書かれたステッカーが貼ってあるだけで、実はただの一般車両に過ぎない」ということは、このHPをいつもご覧くださっている方なら・・・いや、女性専用車問題に関心のある方なら大抵の方はご存知だと思うが、この女性客は未だに、「女性専用は名前だけ」という事実を知らないのであろうか?
任意協力であるからこそ、つまり男性が自分の意思で乗る乗らないを決めてよいからこそ、女性専用車両は「法的に問題ない」ということになっているということは、当サイトでもこれまで度々述べてきたことである。
しばらくすると、ホームに列車が入ってきた。
男性を乗せないようにするためであろうと思われるが、女性専用車両にはこれでもかというくらいピンク色のステッカーが貼られている。
車体(車外)のドア横はもちろん、車内にも各ドアの上や隣の車両との間の扉、さらには隣の車両への扉の向かって左上などにも、出来るだけサイズを大きく取ったピンク色のステッカーが目立つように貼られているのだ(下の写真)。
これは阪急に限ったことではないが、任意協力であるということを隠蔽し、「女性専用」という名称で強制的なものと思わせて、法に触れないようにしながら男性を排除しようとする、姑息なやり方である。
もちろん私達は、「そんなものに従う義務はない」という事を知っているので、「任意協力」という、(鉄道事業者が隠蔽している)ルールに基づいて、乗車させていただいたのだが、乗車する際も後ろから、「女性専用車両なのに・・・」と聞こえよがしにつぶやいてきた女性客がいた。
これも鉄道事業者が任意協力であることを隠蔽しているためであろう。ひとこと言ってやろうかとも思ったが、当会やその協力団体では、乗車会などの活動の際、「相手のほうから高圧的な態度に出てこない限り、こちらから強い態度に出てはならない」というガイドラインを定めている。
ここは抑えてとりあえず全員、座席に座って乗車することにした。
しばらくすると、若い女性の車掌がやってきて私達に声をかけてきた。
車掌:「こちら女性専用車両になっております」
会員:「知っていますが、協力しません」
車掌:「出来ればご協力下さい」
この車掌、私達を降車させることは諦めたが、他に乗車していた男性客2人にも声をかけ、両方とも降ろしてしまった。
結局、車内の男性客は私達だけになったところで、梅田駅を発車。
車内は座席はほぼ全て埋まっているものの、立ち客はまばらで、それほど混雑しているわけではない。
発車してすぐに「この列車の前から4両目は女性専用車両です。皆様のご理解とご協力をお願いします」という、女性専用車両の案内のアナウンスが車内に流れた。
恐らくさっきの女性車掌であろう。
列車は淀川を渡り、すぐに次の停車駅、十三(じゅうそう)に到着。
十三から乗ってきた乗客で、若干立ち客が増えたが、それでもまだまだ混雑というほどではない。
しようと思えば車内を通り抜けることも出来るくらいの乗車率。
十三発車後、また女性専用車両アナウンスが流れた。
さらに、それに続けて「携帯電話電源オフ車両」の案内も流れた(阪急では女性専用車両とは別に一両、携帯電話の電源を切って乗車する車両を設けている)。
車掌にそういう意図はないかもしれないが、これではまるで女性専用車両に男性が乗ることが、携帯電源オフ車両内で携帯電話を使用することと同様であるかのようである。
携帯の使用や喫煙は、本人の意思でやる・やらないを決められるが、男性であることは本人の意思では如何ともしがたい「属性」である。
当会がいつも繰り返し述べているように、公共の交通機関において、「属性」を理由に特定の乗客に不利益を与えるようなことがあってはならない。
男性が(任意協力の)女性専用車両に乗車することと、車内での喫煙・携帯電話での大声での通話(つまり迷惑行為)とは、全くの別物である。
ましてや、実態は混雑のない昼間まで含めて終日実施したりするなど、およそ痴漢対策とは言えないようなものを、表向き「痴漢対策」と称して、「男性=悪」という誤ったイメージを垂れ流すことに一役買っているのだから、なおさらである。
十三から乗車してきた乗客の中に、男女のペアが一組いた。
女性専用車両は任意だと知っていて、女性客が自分の彼氏(?)を連れて一緒に女性専用車両に乗ったのか、それとも2人とも「単に気づいていなかっただけ」なのかは定かではないが・・・
列車は夜の市街地を軽快に飛ばしていた。
車内には結構な人数の乗客がいたが非常に静かで、列車の走行音以外、ほとんど何も聞こえてこない。
茨木市駅で先ほどの男女のペアは下車。
茨木市駅でややまとまった人数が下車したため、車内は(座席はまだほぼ埋まっているものの)立ち客はほとんどいなくなった。
列車は再び夜の市街地を軽快に飛ばし始めた。やはり車内は静かだった。
やがて列車は高架橋に上り次の停車駅、高槻市駅に到着した。
そして私達は予定通りここで下車した。
高槻市~阪急梅田(復路)
高槻市で一旦下車した後、今度は反対方向の高槻市20:34発、通勤特急梅田行に乗車するため、私達は高槻市駅梅田方面行きホームの女性専用車両乗車位置に並んだ。
しばらくして、列車がホームに入ってきた。ホームから、車内の座席に男性客が一人いるのを確認。ドアが開き、私たちも乗車した。
座席はほぼ埋まっていたので、私達は立ち客として乗車。
車内は河原町方面行きと同じで、座席はほぼ埋まっているものの、混雑はしていない。
車内をよく見ると、先ほどホームから確認した男性客の他にも、もう一人、男性客が乗っているのを発見。
列車は高槻市駅を発車した。私達はドアの近くに立って乗車したので、ドア上部に張ってある専用車ステッカーがよく目に入る(すぐ上、下段左の写真)
至近距離からの撮影のため、ステッカー全体が画像内に入っていないが、「この車両は女性専用車両です」とある。
そして、その下に小さく書かれている「注釈」もはっきり読むことが出来た。
写真ではほとんど分からないが、その注釈にはこう書かれている。
目の不自由なお客様は女性専用車両にご乗車になれます。女性のお客様にご同伴の小学6年生以下の男性のお子様。
お体の不自由なお客様と介護者のどちらかが女性の場合に同伴される男性もご乗車になれます。
これによれば、「目の不自由な男性は単独でも女性専用車両に乗れるが、それ以外の障がい者は女性同伴でないとダメ」というようにも取れる。
しかしながら、すでに明らかになっているように、女性専用車両は「名前だけ」で、実際は障害の有無や年齢・性別など一切関係なく、「運賃を支払っていれば、誰でも無条件で乗れる」が本当である。
これは当会が勝手に言っているのではない。
各鉄道事業者はもちろん、国土交通省も認めていることである。
『ではなぜ、男性は障がい者と小学生以下の子供しか乗ってはいけないと車内に表示しているのか?』という反論もあるかもしれないが、よく見ていただきたい。
『女性のお客様に同伴の小学6年生以下の男性のお子様。お体の不自由なお客様と介護者のどちらかが女性の場合に同伴される男性もご乗車になれます』とは書いているが、『それ以外の男性は乗れません』とは書いていない。
つまり、あくまでも「女性に同伴の子供と、女性に同伴の男性障がい者・介護者は乗れます」と言っているだけで、それ以外の男性については「触れていないだけ」なのである。
もし、子供と障がい者以外の男性が本当に乗車できないのであれば、『小学6年生以下のお子様と、お体の不自由なお客様以外、男性はご乗車いただけません』と表示を出してもよいはずである。
しかし、実際にそういう表記をしている鉄道事業者は、日本にひとつもない。
つまり、実際には「子供・障がい者以外の男性」の乗車を禁じているわけでもないのに、よく気をつけて見ないと、「子供と障がい者以外の男性は女性専用車両に乗ってはいけない」と、思い込まされてしまう表記になっているというわけである。
なお、鉄道事業者によっては、たまに車掌が「男性のお客様はご乗車いただけません」などと車内アナウンスすることがあるが、これは事実と異なるアナウンスであり、もしそんなことがあればこれは抗議の対象である。
(鉄道事業者によっては、現場の社員に「女性専用車両が任意協力である」ということを十分知らせていないところもあるようである)
- 男性であっても実は誰でも乗車できるのに「子供や障がい者以外、男性は乗車できない」と思わせるウソ。
- 実際には女性専用でもない(任意協力に過ぎない)のに「女性専用車両」と表記するウソ。
- そして、痴漢対策とは言えないような代物(主に政治目的で推進されて来ており、痴漢対策は建前)なのに「痴漢対策」と称するウソ。
女性専用車両は数々のウソの上に成り立っているのだ。
電車は茨木市・十三と停車し、終着駅梅田へ。
帰りの車内では特に何事も無かったが、改めて、この女性専用車両という制度に対する疑問を新たにした私達であった。