2015年1月 名古屋市交通局への意見書提出の報告

活動履歴

当会では、2015年春から、これまで平日の朝夕に実施していた女性専用車両を終日に拡大すると発表した名古屋市交通局に意見書を提出しました。

以下、その詳細の報告です。

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名古屋市交通局に意見書提出

4月から東山線の女性専用車両を終日に拡大する交通局に意見書提出

名古屋市交通局に意見書提出

名古屋市営地下鉄東山線では、今から13年前の2002年に平日朝ラッシュ時に女性専用車両が導入され、その後、2008年に夕方(17時~21時)にも拡大されてきたが、昨年(2014年)の年末に、中日新聞など一部マスコミにおいて、今度は「来年度(2015年度)から、名古屋市交通局東山線の女性専用車両が終日に拡大」という報道があった。

そこで当会では、以下の内容で名古屋市交通局長宛に、意見書を提出した。

名古屋市交通局御中

2015年1月30日

女性専用車両に反対する会

代表 福山 博

東山線における女性専用車両に対する意見書

 拝啓、貴局益々ご隆昌のこととお喜び申し上げます。

 扨、この度の「中日新聞」報道によりますと、既に貴局において実行されております地下鉄東山線における「女性専用車両」について、平日朝夕ラッシュ時のもならず、平日終日に拡大するとのことですが、女性専用車両はただでさえ、男性を一律犯罪者予備軍として排除する、悪質な男女差別を伴うものであります。

 現在の女性専用車両自体が、痴漢等の犯罪行為の多い時間帯において、男性利用者の多大なる犠牲に基づいて実行されているものでありますが、今後これを終日に拡大するとなれば、更に多くの男性客が地方自治体の実施する差別を受けることになります。地下鉄東山線においては、階段等のすぐ近くに女性専用車両が設定されている駅が多くあり、毎日決まった区間を乗車することが多いラッシュ時間帯に比べて、昼間では慣れない乗客も多く、現在以上に男性客に迷惑をかけるものとなります。

 つきましては、女性専用車両の拡大は中止して、監視カメラの設定や巡回の強化等、男女差別にならない方法での犯罪対策を実施していただきたく、宜しくご検討をお願いいたします。監視カメラや巡回強化により痴漢等以外のスリや暴力及び器物損壊等の犯罪も防止する効果があります。繰り返すようで恐縮では御座いますが、女性専用車両の拡大中止及び現在実施している女性専用車の廃止を強く希望いたします。

 日本で様々な差別についての文献・資料を見ましたが、日本では(名古屋市に限らず)差別の中で人種差別だけを特別に悪質なものとして厳しい対応をし、他の差別、特に男性差別について許容することが多いように感じます。

 人種と性別は、ともに憲法第14条第1項に明示された差別禁止事由であるとともに、生まれた時点で決まってしまう、変えようのない事項です。

差別される側の人にとって、自分の努力では差別されない側になれないという意味で全く同じなのです。

よって人種による差別・分離が禁止される場面で、性別による差別が許されることには原則としてなりません。例外は衣服を脱ぐ場についての(対等な形での)分離くらいです。

したがって、仮に黒人による白人に対する電車内の犯罪がそれ相応に頻発していたとしても白人専用車両が許されないのと同様に、女性専用車両も本来許されないのです。

例えば、統計上外国人による犯罪が日本人による犯罪より遥かに多いからといって、日本人専用車両を設定することは許されないでしょう。

男性差別についても全く同様であり、女性専用車両は全ての男性を差別するものです。

その本来許されない差別を行う時間帯を、平日朝夕から平日終日へと拡大することには、断固反対いたします。

 今後も、貴局が多くの市民および利用者に愛される組織として躍進されることを、強く期待するものです。

敬具

東山線終日化は公明党の働きかけ

かつて、2002年に名古屋では初めて東山線で朝ラッシュ時に女性専用車両が導入された際も、そして2008年に夕方に拡大された際も公明党による交通局への働きかけ(圧力)があったことはご存知だろうか。

実は、今回も終日化が報道される約半年前、2014年6月の名古屋市議会の議事録に、公明党の議員が市議会において交通局長に女性専用車両の拡大を迫ったことが記録に残っており、それに対して交通局長が、「女性専用車両に対しましてさまざまな御意見をいただいている現状において、女性専用車両を拡大することにつきましては、慎重に検討すべき事項と考えております」と答弁していることや、それに対し公明党議員が、「あまりにも残念でございます」などと返していたことも記録に残っている。(平成26年定例会6月21日―13号)

(以下、市議会議事録から一部抜粋・要約)

公明党議員:女性専用車両は、東山線で全国初の地下鉄での取り組みとして始まりました。この12年間、時間の延長をしつつ継続されているということは、多くの方の協力のもと、安心が確保され、喜ばれているからだと思います。

しかし、いまだに路線の拡大はなされておりません。

防犯のためのカメラは、地下鉄駅構内ではこれまで1,550台設置され、本年度からの設置もさらに196台予定されています。

しかし、警察に通報した犯罪等の件数は、駅構内より断然車内でのものが多いにもかかわらず、現在、電車内には1台も設置されておりません。

交通局長:議員御指摘の女性専用車両は、平成14年9月に導入して以来、一定の効果があると認識をいたしておりますが、女性専用車両に対しましてさまざまな御意見をいただいている現状において、女性専用車両を拡大することにつきましては、慎重に検討すべき事項と考えております。

また、車内防犯カメラの設置には、撮影範囲が限られるなどの制約がありますことや多額の費用を要することなどの課題がありまして、現状での設置は難しいと考えておりまして、他事業者の状況を調査し、費用対効果の検証をすることも含め、研究課題としてまいりたいと考えております。

今後につきましては、痴漢、盗撮防止を啓発するための案内放送やポスター掲示などの防犯対策を強化するとともに、愛知県警との連携をより一層密にし、お客様が安心・安全に地下鉄を御利用いただけるよう取り組みを進めてまいりたいと存じます。

公明党議員:交通局長さんの御答弁でございますが、利用者が望むこの女性専用車両、そして、防犯のためのカメラ、ともにできないよという御答弁でした。余りにも残念でございます。

恐らく、これだけではなく他にも交通局への働きかけは行われていたであろうと思われるが、今回も2002年・2008年の導入時・拡大時と同じような状況だったようだ。

以下、このやり取りをもう少し細かく見てみよう。

まず公明党議員の

>この12年間、時間の延長をしつつ継続されているということは、多くの方の協力のもと、
安心が確保され、喜ばれているからだと思います。しかし、いまだに路線の拡大はなされておりません。

という発言。

「この12年間時間の延長をしつつ継続されている」のは、「喜ばれているから」ではなく、他でもない公明党が「強く推しているから」であろう。これは交通局長が、

>女性専用車両に対しましてさまざまな御意見をいただいている現状において、
女性専用車両を拡大することにつきましては、慎重に検討すべき事項と考えております。

と発言していることからも読み取れる。交通局も本当は女性専用車両などやりたくないのである。

ここからは過去の話になるが、実は今回だけではなく、前回、2008年に女性専用車両が夕方にも拡大される前(2006年)にも、市議会での公明党議員の女性専用車両拡大要求に対し、交通局側が「公共交通機関は誰でも公平に乗れるのが大原則だが、女性専用車両は特別な措置」「女性専用車両導入後も痴漢件数に大きな変化は見られない」 という主旨の答弁をして、「女性専用車両の拡大はしたくない意思」を遠まわしに表明している(平成18年9月定例会10月17日-21号)。

それでも推進派議員は、「痴漢対策に限らず、女性が安心して乗車できるようにするため」 として、「路線や時間帯の拡大に努力すること」 と、市議会で意見を述べている(痴漢件数が減らないと分かれば、「女性の安心のため」と、理由が変化)。

また、議事録にはこの他にも推進派議員の 「女性専用車両は時代の流れ」「他では終日やっているところもあるのに、名古屋は未だに導入当初のまま進んでいない」(当時、東山線の女性専用車両は朝のみだった) といった主旨の発言が見られる(平成19年2月定例会3月6日-05号)。

交通局は女性専用車両を強く推してくる公明党と、交通局に寄せられる反対意見の間で、なるべく女性専用車両を拡大しないようにしながらも、この12年間、少しずつ、なし崩し的に公明党の言いなりになっているのだ。本当に「喜ばれて12年間も継続している」のなら、交通局もこんな答弁はしないだろうし、今頃、東山線だけでなく他路線でも実施しているだろう。

実は2008年に拡大した際には、公明党は東山線ではなく、「名城線にも女性専用車両を設置せよ」と求めていたのだが、しかし、実際には当時朝だけだった東山線の女性専用車両が夕方にも拡大された。

そのため、当時インターネット上などでは、「どういう形であれ、とにかく拡大することが目的になっているのでは?」という意見も出ていた(実際には交通局側の答弁などから、恐らく、少しでも批判をかわすために、交通局が東山線以外には出来る限り拡大しないようにしていたものと思われる)。

ここからは今回の話に戻るが、先に述べたとおり、今回も公明党議員が、「未だに路線の拡大はなされておりません」などと発言している。

つまり、「女性専用車両は他路線にも拡大されて当然」 という認識なのである。

運行時間帯については(土休日は別にして)これ以上の拡大が出来ないところまで来たのだから、このままでは他路線への拡大も時間の問題であろう。

そして、ご存知の方も多いと思うが、公明党は選挙などがある度に、「公明党は女性専用車両など、女性の視点に立った政策を推進してきました」 というようなアピールをしている。

結局のところ、「痴漢対策」は表向きの理由なのである。

今回、終日化されたことによって、「痴漢対策」という理由を疑問視する向きも出てくるであろうが、そうなると今度は、関西など他地区の例でもわかる通り、「痴漢対策・痴漢を減らすため」から、「女性の方に安心して乗車いただくため」 などと理由がすり替わってくる。

恐らく名古屋でも、今後そのような方向に向かうであろう。

そう言っておけば、混雑のない時間帯にまで終日実施していることだけでなく、女性専用車両導入後、痴漢件数が減っていないことについても、うまい言い訳が出来るからだ。

先ほど、2006年の市議会で交通局側が「女性専用車両導入後も痴漢件数に目立った変化はない」と答弁したことを述べたが、東山線に女性専用車両導入後、逆に痴漢が増えてしまったことを報告しているマスコミ記事もある。

【女性車両導入も痴漢増える 名古屋、一般車両で被害】
http://www.47news.jp/CN/200305/CN2003052301000017.html(現在はリンク切れ)

なお今回、公明党議員(小林議員)は監視カメラの設置も同時に要求しているが、当会やその関連団体は、女性専用車両と監視カメラの「併設」を求めているのではない。

「女性専用車両の廃止と引き換えに監視カメラを設置するべき」というのが、当会の主張である。

「痴漢件数が減らない」とか、「女性専用車両と非女性専用車両で混雑率が違う」「駅によっては便利な位置に女性専用車が来る」などというのは、それぞれ「導入した結果生じた問題点」であって、「女性専用車両そのものが抱える本質的問題」ではない。

本質的に問題なのは、「アパルトヘイトと同様の、公共の場における、属性を理由にした排除である」ということであろう。

女性専用車両のような、「日本版アパルトヘイト」と言われても仕方がないようなものを、いつまでも続けるべきではない。

当初から公明党によって進められてきた女性専用車両

2002年に平日朝の東山線に導入され、2008年に夕方に拡大、さらに今回終日化されたのも全て公明党の働きかけによるものであるということは、お分かりいただけたかと思うが、札幌・東京・横浜・大阪・神戸など、他の各都市地下鉄に導入されたのも、実は全て公明党の働きかけによるものである。

さらに2005年、国土交通大臣に公明党の北側氏が就任すると、公明党と一体となった国交省の圧力により、関東 (首都圏)のほとんどの鉄道事業者において、女性専用車両の一斉導入が行われた。これについては、2005年5月12日付の日刊ゲンダイ紙に、【公明党 国交省握り 鉄道「私物化」】という見出しで、大きく取り上げられている(下の写真)。

もっとも、最近では先日の阪急電鉄のように、政党やその他からの圧力等とは関係なく、「今や女性専用車両は当たり前のこととして定着しているから」 と言わんばかりに、他社との横並びやCS(顧客満足度)向上などの理由で、自ら女性専用車両を拡大してくる向きも出てきたようであるが、世間ではまだまだ女性専用車両のことを純粋に「痴漢対策」だと思っている人が多い。

当会がいつも言っているように、(そして名古屋市交通局も2006年の市議会で答弁していたように)公共交通は同じ運賃を支払えば、誰もが公平に利用できるのが大原則である。

しかし、そんなところに、痴漢対策を建前にした女性専用車両がどんどん増やされ、それが今や当たり前のようになってしまったのである。

交通局からの正式発表

東山線での女性専用車両終日化について、2015年3月11日付で、交通局から正式な発表があった。

交通局発表の資料
http://www.kotsu.city.nagoya.jp/dbps_data/_material_/localhost/_res/about/press_release/20150311-1.pdf(現在はリンク切れ))

によると、「女性専用車両を設置していない時間においても、東山線は他路線に比べて乗降客が多く、痴漢被害が多いことから拡大して実施するものです」とあるが、これは「後から付けた、表向きの理由」である。当ページの本文をここまできっちりと読んで下さった方なら、痴漢対策ではなく、市議会の公明党の要請によるものであることはお分かりいただけるであろう。

結局、公明党の意向で拡大するものを、表向き「痴漢対策」と称して、体よくまかり通らせようとしているだけなのである。

よく考えれば分かるが、2002年に朝ラッシュ時に女性専用車両が導入されて13年、夕方に拡大されてからも7年痴漢件数が減らないどころか、近年逆に増えている(上記、交通局発表の資料にも、近年痴漢件数が増加していることが記されている)のだから、「女性専用車両に痴漢件数を減らす効果がない」ということは明々白々である。

交通局の発表通りだとすると、「朝夕ラッシュ時に女性専用車両を設けているにもかかわらず、ラッシュ時以外に痴漢が多発しているため、全体の痴漢件数が減らない」ということになるが、下記のグラフを見ていただいてもわかる通り、関西や中京圏よりもはるかに人の多い首都圏ですら、昼間の痴漢発生は極めて少ないという結果が出ている。

女性専用車両を設置しても痴漢が減らないのは、「女性専用車両を設置していない時間帯に痴漢が多発しているから」ではなく、「非女性専用車両で痴漢が多発しているから」である。

(警視庁HP・都内における痴漢犯罪の発生状況 ~ 平成22年上半期 ~より。)

そもそも、朝夕ラッシュ時という、「一番痴漢が発生する時間帯」に設けても痴漢件数が減らないのだから、それ以外の時間帯に設けること自体、ナンセンス以外の何物でもない。

しかしながら、今回の件についてのマスコミ報道はどこもほぼ、「痴漢対策」一色である。これでは国民は女性専用車両の拡大について、本当のことを知るはずがない。

女性専用車両に反対することは、痴漢対策に反対することではない。
「痴漢対策」という、「誰もが反対しにくいうわべの理由」で、公共交通機関に本来あってはならない物を正当化しようとする動きに反対しているのである。

名古屋においても、今回の終日化で「痴漢対策」という理由を疑う人が、少しでも増えることを願うものである。

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