当会関西本部では2021年1月4日に朝の近鉄奈良線・大阪メトロ御堂筋線・阪急京都線・JRおおさか東線などで非協力乗車会を行いました。
駅員や乗務員など職員からの直接の声かけはありませんでしたが、鉄道事業者はどうやら”作戦変更”したようにも見えます。
以下その報告です。
各路線で非協力乗車
今回のルート
①近鉄奈良線:近鉄奈良→大阪難波
②大阪メトロ 御堂筋線:なんば→梅田
③阪急京都線:大阪梅田→淡路
④JRおおさか東線:JR淡路→新大阪
⑤JR京都線:新大阪→大阪
近鉄奈良線快速急行 近鉄奈良→大阪難波
今回は朝8:20に近鉄奈良駅の東改札口前に集合した。
近鉄奈良駅は終着駅のため全ての電車がここで折り返すが、私達は8:35発大阪難波行きの快速急行に乗るべく、発車時刻の10分ほど前からホームに並び、電車が到着してすぐに女性専用車両に乗車しだ。
車内は始発ということもあり、私達の他には女性客が数人という状況。
折り返しのため運転士が運転席から出てきたが、すぐ近くで女性専用車両に乗車している私達を見ても声かけはしてこなかった。
このあとしばらくして、今度は車掌がホームを歩いてやってきたが、こちらも声かけはして来ず。
2019年4月の乗車会の際には奈良駅で運転士が声をかけてきて、それでも私達が移動しないと分かると今度は助役を呼んで来るという状況だったのだが、この点は改善されたようだ・・・と思ったら、発車する寸前に車掌が「この電車の1番後ろの車両は女性専用車両です」という自動アナウンスを流した。
列車は奈良駅の地下ホームを発車し、しばらくして地上に上がった。
ほどなく次の新大宮駅で10数人くらいが乗車してきた。
新大宮駅は改札口がホームの最も奈良寄りの一カ所しかなく、しかも近鉄奈良線の女性専用車両は最後尾(最も奈良寄り)となっているので、女性専用車両を避けようと思えば一両分を余分に歩くしかない。
障がい者や高齢者などにはきついだろう。
関東で言えばかつての東急東横線の菊名駅状態といえば分かりやすいだろうか?
東横線もその後、女性専用車の設定状況が変わっているが、当初は平日の終日であり、また位置も最も横浜寄りの車両になっていたため、横浜側の端にしか階段もエレベーター・エスカレーターもない菊名駅で苦情が多発していた。
当時「菊名問題」と呼ばれていたが、東急はそれを受けて上下両方向で終日運行していた女性専用車を「始発から午前10時までの上下と18時以降の下り(横浜方面)」のみに縮小し、位置も中間車両に変更した。
ちなみに現在(2021年1月)は朝のラッシュ時の上下のみ設定で、18時以降の下りは東京メトロ副都心線と直通する際に取りやめており、設定車両も最も渋谷寄りの車両への設定となっている。
近鉄奈良線では設定が当初から平日朝ラッシュ時のごく限られた時間帯だけであることや快速急行以外の普通や準急、急行などには設定がないことから、沿線の利用客も女性専用車両をあまり意識していないらしく、私達が乗車した電車の女性専用車両にも新大宮から老夫婦らしき男女を含め、男性客が3人ほど乗ってきた。
すると車掌が車内に「この車両は女性専用車両です」とアナウンスを流し、その際に老夫婦のおじいさんも含めて、2人の男性客がすぐに隣の車両へ移動してしまった。
近鉄は今では乗務員による直接的な声かけはしなくなった代わりに、自動音声や肉声でのアナウンスによってなるべくその車両に乗っている男性客を移動させるようにし、相変わらず高齢の男性客や夫婦・恋人の男女まで乗せないようにしていこうという作戦になってきているのだろうか?
残る1人の男性客は移動しなかったが、次の大和西大寺駅で降りていった。
大和西大寺駅で車掌が交代した。
交代した車掌もやはり男性を乗せないため、大和西大寺の次の停車駅、学園前停車中に肉声で「ただいまの時間、この電車の一番後ろの車両は大阪難波まで女性専用車両です」というアナウンスをしていた。
学園前を出て列車は引き続き奈良市の郊外の住宅地を走る。日が昇ってきて外から柔らかい日差しが差し込んできた。
車内はこの時点でもまだ座席がすべて埋まっておらず、かなり空いている。
その次の生駒駅でもやはり、車掌が肉声で女性専用車両のアナウンスをしていた。
私達がなかなか降りないから、何とか降ろそうとして何度もアナウンスしているのだろうか。
どうやら男性が一人もいなくなるまでアナウンス攻撃を続けるつもりのようだ。
「(女性専用車両に男性がいますが)私達は放置せずきちんと仕事してます。ちゃんと移動するように言っています」という「仕事してますアピール」もあるのだろうが、その他にも私達につられて乗車してくる男性をそのまま乗車させないよう、ブロックする意味もあるのだろう。
生駒駅発車後にすぐに奈良県と大阪府との県境の長いトンネルに入る。
この時点でようやく座席が埋まった・・・というより厳密にはまだわずかに空席がある。
そしてこの列車は生駒を出ると次は大阪の都心に近い鶴橋まで停まらない。
つまりこの列車は混雑もしないのに女性専用車両を設定していることになる。
(コロナが問題になる以前にもこの列車で非協力乗車したことがあるが、やはり混雑はしてなかった)
近鉄に限ったことではないが、最初に痴漢対策と言って導入しながら、いつのまにか「安心して乗車いただくため」に理由がすり替わるのもこれを見ていると分かるような気がする。
こう言っておけば「混雑していなくても痴漢対策に限らず、安心してご乗車いただくため」と言い訳できるし、深く考えない利用客には「痴漢対策を言い替えただけ」と受け取ってもらえる。
関西ではJRなど終日実施が当たり前のようになっているし、誰も乗っていない女性専用車と言うのも珍しくないので、反対派でない限り誰も特に何も言わなくなっているのかもしれない。
しかしこれだけを見ても「女性専用車両が痴漢対策」はおかしいと分かる。
痴漢対策は反対意見を排除するための体のよい「うわべの理由」であり、建前なのだ。
生駒駅を出てすぐ入った新生駒トンネルは長さ約3.5km。
結構なスピードで走っているが、それでも駆け抜けるのには数分かかる。
・・・県境の長いトンネルを抜けると大阪であった。
大阪府に入ってすぐ石切駅を通過。標高の高いところを走っているため、右手に大阪の街が一望できる。
昼間の景色も良いが、夜は見事な夜景が見られる場所だ。長い下り坂を駆け降りながら額田、枚岡などの駅を通過する。
下り坂を降りきって瓢箪山駅を通過したあたりから市街地に入り、さらに途中の駅を次々通過。
布施駅を通過して大阪市内に入り、次の停車駅鶴橋に到着。
鶴橋駅停車中にも車掌がまた肉声で女性専用車両のアナウンスをしていた。しつこい。
鶴橋を出てすぐ地下線に入り、大阪上本町、日本橋と各駅に停車して終点の大阪難波駅には9:17頃に到着した。
私達が乗った列車は大阪難波止まりだったが、快速急行の中にはこのまま阪神なんば線に直通し、神戸三宮まで行く列車もある。
そしてその場合、女性専用車両は大阪難波から先は設定解除となる。
しかし設定解除といっても本当は「女性専用」なんてただの名前だけ。
実際は性別に関係なく、年齢や障害の有無にも関わらず誰でも乗れるただの「一般車両」である。
つまり、夕方や夜に飲んでも全く何の問題もない、朝専用缶コーヒーみたいなもの。
要は単なる名称であり、何の法的根拠も強制力もない。というより強制力を持たせることが出来ない。
なぜ出来ないのか、いつも当会サイトをよくお読みくださっている方ならすでにお分かりかと思う。
この後、おおさか東線のところでも述べるが「バリアフリーに反する」「男性差別だ」といった批判からの言い逃れのためはもとより、憲法に謳われている両性の平等にも反するため強制はできないのだ。
大阪メトロ御堂筋線 なんば→梅田
近鉄の大阪難波駅から少し歩いて大阪メトロのなんば駅に到着。
女性専用車両位置の柱にでかでかと専用車表示が貼りだされており、大阪メトロも女性専用車両乗車位置を目立たせることには随分熱心なようである。
さて現在、女性専用車両限定で主に女性向けの広告を募集し、他よりも割高な広告料で女性専用車両を金儲けに利用する「女性専用車限定広告」が日本全国の鉄道事業者で広く採用されているが、最初に女性専用車両のみに車体広告を出し、女性専用車両を営利目的に利用したのは、恐らくこの大阪メトロ(当時は大阪市交通局)であろう。
ちなみに大阪市議会の過去(2004年)の議事録には、公明党の議員が交通局の担当者に対し、市議会で「女性専用車両を目立たせるため」に車体広告を出すよう提案している記録が残っている。
(これはつい先日、2020年11月の活動報告のページでも取り上げているので、詳しくはそちらを参照いただきたい)
女性専用車両を目立たせるためということになっているが、朝ラッシュ時の安全性確保や車内の混雑度の差が生じる等の理由で女性専用車両の導入・拡大に難色を示していた当時の交通局に、広告料収入になるからということでさらに女性専用車両の導入を推進させようとしたのではないか?
公明党が女性専用車両の導入を「党の実績」としてアピールしていたことやそのために全国的に鉄道事業者に対して女性専用車両の拡大を強く働きかけていたことは、この女性専用車両問題に関心のある方ならよくご存知であろう。
なんば駅からは9:27発の新大阪行きの女性専用車両に乗車した。
声かけや女性専用車両アナウンスは特になかったものの、隣の車両との混雑差が明白だった。
梅田駅には9:35頃に到着。御堂筋線の梅田駅から少し歩いて阪急の大阪梅田駅に向かった。
阪急京都線特急 大阪梅田→淡路
大阪梅田駅では10:00発の京都河原町行きの特急の女性専用車両に乗るため、約10分前からホームで並んで列車を待った。
私達が到着してすぐホームに一本前の9:50発の特急が入線してきたが、これは女性専用車両の設定なし。
阪急では京都線の特急と通勤特急に平日の終日で女性専用車両があるが、ロングシート車(横に長い座席の通勤車両)は対象外である。
9:50発の列車を見送ってさらにしばらく待つと、京都側から折り返し10:00発の特急になる列車が入線してきた。
私達が乗車する列車はこれである。
列車が到着する際にホームの自動アナウンスで「大阪梅田方面から5両目は女性専用車両です」と流れていたが、しかし車内には男女ペアの姿があり、そのまま降車側の扉から降りていった。
阪急の大阪梅田駅は終着駅で全列車がここで折り返す。
乗客が反対側の扉からすべて降車した後、私達がいる乗車側の扉が開いた。すぐに私達は乗って着席。
座席は向かい合わせのクロスシート(新幹線のような座席)である。
停車中に車内やホームを職員計3人ほどが通りかかったが、私達には何も言って来なかった。
しかし、私達の近くの席にいた女性客がホームを通りかかった乗務員に「男子ダメ?」と質問したところ、「隣の車両に移動してもらってます」と回答していた。
その後に男女1組が乗ってきたものの、車内の自動アナウンスで「この電車の大阪梅田方面から5両目は女性専用車両です」と流れた途端、その男女は隣の車両に移動してしまった。
先ほどの近鉄といい、この阪急といい、まるで申し合せたように同じやり方(男性を見つけると放送で移動させる)をとっている。
しかもこの阪急の場合は女性専用車両アナウンスのあとに続けて「車内ではマナーを守り快適な車内環境づくりにご協力を・・・」とアナウンスするなど、まるで女性専用車両がマナーであるかのように思わせるために意図的に誘導しているのではないかと勘ぐりたくなる。
その後、大阪梅田駅停車中にまた別の男性客1人がこちらの車両に移動してきて、そのまま私達の近くの席に着席した。
大阪梅田駅を発車して、しばらくすると列車は淀川を渡る。
淀川を渡って次の十三駅に到着すると、男性客が1人下車して行った。
先ほどの大阪梅田駅で私達の近くに座った男性とは別人である。
どうやら私達が知らない間にいつの間にか乗車していたらしい。
ちなみに大阪梅田駅からの、私達の近くの席にいる男性客は十三に着いてもまだ座席に座っている。
十三駅を発車後にもまた女性専用車両の自動アナウンスがあったものの、大阪梅田駅からの男性客は移動せず。
ここが女性専用車両(と名の付く一般車両)であることを承知の上で移動しない人が私達の他にもいるのだとすればこれは良い傾向である。
ここから南方・崇禅寺を通過し、乗務員や女性客からの直接の声かけは全くなく、10:08頃に淡路駅に到着。ここからJRおおさか東線に乗り換えるために下車した。
JRおおさか東線・普通 JR淡路→新大阪
阪急淡路駅からJRの淡路駅へは改札口を出てから少し歩く。
5分ほど歩いてJR淡路駅に到着した。
JR淡路駅は2019年3月にJRおおさか東線の放出~新大阪間が新規開通したのに合わせて開業した、まだ新しい駅である。
当日参加の各メンバーともこれまで乗車会などで通りかかることはあっても、JR淡路駅から乗車したのは皆初めてだった。
ここで新大阪行きの普通列車を待ったのだが、もう朝のラッシュ時は過ぎたためホームで列車を待つ人はまばらで、また天気が良かったこともあり、市街地の中の駅でありながら辺りの雰囲気は実に長閑なものだった。
しかし、JR西日本の関西エリアの駅はその多くで女性専用車の位置にちょうど合わせて階段なエスカレーター・エレベーターがピッタリ来ることが多い。
JR西日本は男性の高齢者や障がい者よりも女性の健常者を優先しているのである。
「一両分移動すれば良いだけで、大したことないじゃないか」という人も中にはいるかもしれないが、それは若い健常者の感覚である。
障がい者や高齢者にとって一両分余計に移動させられることがどういうことか良く考えたほうが良い。
当会会員にもそのような男性もいて「つらい」という話を聞いている。
「バリアフリーにも反するし、男性の障がい者や高齢者などをあまりにも軽視した差別ではないのか!」とも言いたくなってくるが、こういうことを言われたときに鉄道事業者がうまく逃げられるよう「女性専用車は任意協力で法的な根拠も強制力もない(=本当は男性であっても誰でも乗れる)」ということになっているのである。
先ほど「女性専用車は朝専用缶コーヒーのようなもの」と申し上げたことを思いだしていただきたい。なぜ女性専用車が任意協力になっているか、良く分かるだろう。
さらに女性専用車は男性の障がい者・高齢者だけでなく、内部疾患を持つ男性、夫婦や恋人の男女、子連れの家族、男性に見える女性、若い健常者であっても男性への差別が不快に感じる男性などにも不便や苦痛を強いているといえる。
しかも当会が過去繰り返し述べてきたように、JR西日本の女性専用車は痴漢対策を名目にしているだけで、実際は営利目的と化している。
混雑のない日中や土曜休日まで毎日・終日実施している時点で、すでに痴漢対策としてはおかしい。さらにJR西日本は以前から女性専用車を売り物のように宣伝して女性客の利用を増やそうとしたり、女性専用車だけに「女性専用車限定広告」と称して女性向けの広告を非女性専用車両よりかなり高い広告料で募集するなどしているのだ。
過去何度も当サイトで紹介しているが、JR西日本が過去に行っていた女性専用車の宣伝を見ても、やむを得ない痴漢対策ではなく、明らかに客寄せサービスであることが分かる。
このように女性専用車には大変熱心なJR西日本だが、その一方で以前から職員による痴漢や盗撮が後を絶たない。
つまり女性専用車に熱心なだけで、痴漢対策に熱心だとはとても言えない。
「女性専用車=痴漢対策」ではないのだ。
ちなみにJR西日本の駅で女性専用車の位置にちょうど合わせて階段やエスカレーター・エレベーターがピッタリ来ることが多いのも、偶然ではなく意図的なものである。
下記に示したのは2004年にJR西日本が大和路線・阪和線に女性専用車を新規導入した際出した資料であるが、主要駅の天王寺駅で階段が近くなるように女性専用車を設定した旨が記載されている。(下左の写真はJR難波駅のもの)
このように詳しく見ていけば、女性専用車は「公共性の高い交通機関において「とんでもないもの」だと分かるが、女性専用車が設置され始めてから約20年が過ぎている。
今では当たり前のようになってしまったからか、ここJR淡路駅でも電光掲示板に「この電車には女性専用車があります。ご利用のお客様は、足元の女性専用車マークの位置でお待ち下さい」と字幕が流れ、またホームでの自動放送でも同じ内容が流されていた。
しばらくするとやってきたのは10:25発新大阪行き。
女性専用車の車内は女性客が10人ほどいるだけで空いていた。声かけ等は特になく、10:30頃終点の新大阪駅に到着した。
JR京都線・普通 新大阪→大阪
新大阪駅からは10:37発の宝塚行き普通の女性専用車に乗車した。
先ほどのおおさか東線よりは乗客が乗っており、座席がほぼ埋まり、若干立ち客がいる程度である。
車内では私達のすぐ近くにいた女性客数人が何気ない会話を続けており(この情勢で車内での会話はあまり良くないかも知れないが…)特に私達のことを気にしている様子はなかった。
この電車でも特にこれといった事はなく、10:41頃に大阪駅に到着。解散した。
今回の乗車会で思ったことは各鉄道事業者とも直接の声掛けはしなくなってきているが、一方で「任意だと知らせずに『ここは女性専用車です』アナウンスを強化すること」によって、男性を乗せない作戦に切り替えてきているということである。
これに対抗するには少しでも多くの男性が「意図的に」乗車する必要がある。
当会はまだまだ人数が必要である。
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