新宿駅で錯乱女性が暴言を吐くという迷惑行為をしたにもかかわらず、京王は女性の身柄を確保せず帰すという大失態を演じました。
そのため、私たちは警察署へ被害届を出すことになり、参加者のうち5名が所轄の新宿警察署へ向かいました。
以下、顧問・兼松からの報告です。
2.警察署へ行き説明
警察署につくと「代表者に話を聞きたい」ということなので、(代表者ではありませんが)行きがかり上、私が事情を説明することになりました。
通されたのは「応接室」ではなく、「取調べ室」と書いてある部屋でした。
まあ、警察にはこういう部屋しかないのだろう、と納得(?)しました。
何しろ、「取調べ室」は初めてです。
まず、身体検査をさせられました。
警察官は「こういうところには、いろんな人間がきますので、一応・・・」などと言っていました。
何しろ、初めてなので「そういうものか」と素直に従いました。
しばらくして、事情聴取が始まりました。
ごく普通の感じの担当官です。
私の言っていることをメモしていますが「紙切れ」とは言わないものの、1枚のペーパー、決して調書と呼べる代物ではありませんでした。
でも、まあ、初めてなので、「(調書とは)こういうものか」と思いました。
で、一通り説明した後、「いかに、その女性の行動が尋常ではなかったか、私らに対する侮辱がひどかったのか、録音があるので聞いていただきたい」と言うと、その担当官は退出しました。
私は、てっきり、(仲間が持っている)録音を聞きにいったと思いました。
説明中、私が出した名刺がポツンと残されていたので、録音を聞いて、戻って来るもの、と思っていました。
ところが、(録音を聞く間もないくらいで)やってきたのは、別の(丸刈りの)担当官で、何を言うかと思いきや、いきなり「侮辱罪にはあたらない」と言うのです。
その理由は「公然と人を侮辱はしていない」ということらしいのですが、電車内で、何十人もいる前での「キチガイ」だの、「気持ち悪い」だのと人をののしった行為が侮辱でないとしたら、一体、何が侮辱罪にあたるのでしょうか?
そこで、私が「録音を聞いていただいたのですか?」と言うと「録音を聞いたら、帰ってもらえるのか?」などと言うのです(この時点で、証拠の録音を聞かずに、「侮辱罪ではない」と言っていることがばれた)。
私が「帰るかどうかは、他の人と相談しないとわからない」と言うと「ここは、あなただけの部屋ではない」などと言う始末。
泊り覚悟でわざわざ説明に来ているのに、何たる言いぐさ。
これには、日頃、温厚な私もキレました(と言うのは、ウソですが、ちょっとムカッとしました)。
「帰らないと、不退去罪で逮捕する、とでも言うのですか?」と言うと、これにはカチンときたらしく、その担当官は「不退去罪で逮捕などとは言っていない。揚げ足取りだ」と声を荒げました。
そこで、私は「聞いているだけですよ。質問しているのだから、そうでないなら、『不退去罪で逮捕するつもりはない』と言えばいいだけの話ではないか!」と言ったら、それ以上は何も言いませんでした。
しかし、ここからが、この担当官の本領発揮の時間でした。
この担当官は、いわゆる「賛成派」だったのです。
何とこんなところにも「賛成派」がいるとは!
「警視庁が(女性専用車の導入に)一役買った」というのを(以前)聞いたことがありましたが、なるほど、と頷けました。
私は、いろいろ説明する過程で「京王電鉄が、『女性専用車』などとウソの表示をしているから、利用者が『男性は乗れない』と勘違いしている」と言いました。
そこで、その担当官は「その女性も、『男性は乗れない』と勘違いして、そういう行動をしたのだろう」と、その女性を擁護し始めたのです。
その上、最初に調書をとった担当者が仲間の撮影した駅のホームの掲示板、「女性専用車」、「Women Only」と書かれた掲示板が写っている写真を持ってやって来て、「これなら、勘違いするのも無理はない」とフォローしていました。
私が「勘違いだからと言って、殺人が許されるわけではない」と言うと、その担当官は「殺人と暴言(侮辱)は全然違う」と反論しました。
たしかに、「殺人」と「侮辱」は罪の重さは全然違いますが、「勘違いだからと言って、許されない」のはどちらも同じです。
「勘違いだから」と言って「殺人」が許されるわけではありませんし、「暴力」が許されるわけではありませんし、「侮辱」が許されるわけでもありません。
また、その担当官は「あなたたちがわざわざ、(女性専用車に)乗るから、こういうことが起こる」などと言って、さも私たちが(女性専用車に)乗ることがいけないかのような、私たちに非があるかのような発言をしました。
そこで私は小樽市の銭湯の「外国人入場拒否事件」の裁判を例にとり、外国人が入れる銭湯が他に幾らでもあるにもかかわらず、わざわざ、小樽市まで出かけて、外国人の入場を拒否している銭湯に入ろうとした場合でも、その行為は「わざわざもめ事の原因をつくっている」などと問題にならなかった、それと同様、「わざわざ、(女性専用車に)乗る」ことは、何の問題にもならない、と反論しました。
さらに、その担当官は「国土交通省や鉄道会社は『男性も(女性専用車に)乗れる』と認めている」という私の説明に対し「『男性も乗れる』と言っても、乗ることを積極的に認めているわけではない、乗ることを奨励しているわけではない」などと言いました。
そこで私は、「積極的に認めていない」とか「奨励はしていない」とかは、何の意味もない。
要は「強制」か「任意」か、「乗れる」のか「乗れない」のか、この2つに1つである、と反論しました。
ところで、このようなやり取りのなかで、劇的な変化がありました。
あることを契機に、その担当官の態度がガラリと540度(180度では回転不足、360度では元通りだから)、変わったのです。
それは、私が法律の話を始めた時でした(法律の番人である官憲や司直の関係者には、法律論が有効のようである、と言うか、そうでなければおかしい)。
「男性を(女性専用車に)乗せたくないのなら、そういう法律をつくればいい。法律に則って、男性を乗せないようにすればいい。それがスジ(道理)というものだろう。なぜ、そうしないのか?」
「いや、実は、その種の法律が存在する。(明治33年に制定された)鉄道営業法34条には『制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス』とあり、その2項には『婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ』とある。この『婦人ノ為ニ設ケタル車室』は『女性専用車』と解することも可能であり、もしそうであれば、『男性はみだりに(女性専用車に)立ち入ってはいけない』ことになる。」
「では、なぜ、この法律(の条項)をキチンと適用し、堂々と『女性専用車』に男性が乗ることを禁止しないのか?それは、そんなことをすれば、国の最高法規である憲法(11条、13条、14条1項など)に抵触するからである。鉄道営業法34条2項を適用するには、自由権や平等権を保障している現行憲法を改悪する必要がある。しかし、そんなことは不可能。だからこそ、推進派であるはずの国交省でさえも、実際、運行している鉄道会社でさえも、『男性も(女性専用車に)乗れる』と認めざるを得ないのである。」
このような法律論を展開した途端、その担当者は今までの挑発的な、見下したような態度を一変しました(少なくとも、私には、そう見えた)。
まあ、こういうところ(取調べ室)にやってくる連中は、一癖も二癖もあるのが普通、被疑者も多いでしょう。
ついつい横柄な態度になりがちなのはわからないわけではありません。
まして、普通の人(刑事さんと言えども、特別、差別問題に精通しているわけではない)からすれば、「痴漢対策」として導入された「女性専用車」にわざわざ乗る連中(われわれ反対派)は「被害者」というより「問題児」、という意識があっても不思議ではありません。
良し悪しの問題というより、それが、(残念ながら)普通の人たちの反応、現実でしょう。
そして、この現実を変えようとしているのが私(ら)、それが、私(ら)の使命なのです。
その担当官にも、(ようやく)わかっていただけたのでしょうか「あなた(たち)が、法律を重視して活動していることは(よく)わかった」などと理解と取れる発言をしました。口調も丁寧な感じに変わりました。
ただし、「なるべく乗らない方が問題は起こらない」というようなことは相変わらず言っていました。
その後、部屋から出て行ってしばらく帰ってこなかったので、私も部屋を出て、事務局を通り、廊下に出ると、その担当官が仲間と一緒に録音を聞いていました。
要するに、駅員にしろ、警察官にしろ、(また、裁判官にも)「女性は弱い。女性は被害者」という意識があるのではないか、一方で「男性は女性のために多少の我慢をすべき」という意識が(根強く)あるのではないか?
まあ、それも程度の問題でしょう。
行き過ぎれば、それは、(男性)差別になります。
また、「女性優遇」は個人レベルで(妻や恋人、友人などに対して)行われるべきであり、社会全体が一律に女性を優遇する、というのは、逆に「女性を蔑視するもの」、「女性差別」との指摘もあります。
とにかく、この日は、あり得ないことがいろいろ起こった日でした。
警察を出た時は、すでに日付が変わっていました。
電車もなくなった4人(1人は終電に間に合って帰宅)はファミレスとファーストフード店をハシゴし、電車が動き出すまで、昨日のこと、そして今後のことをアレコレ話し合いました。
そして、駅で解散。
久々の徹夜、満足感と消化不良感が交錯するなか、まだ暗いうちに帰路に着きました。
今回の件について、京王本社に抗議に行きました。