御堂筋線事件と女性専用車両
現在の女性専用車両は2001年に京王線で深夜時間帯に導入されたのが最初(試験導入は2000年12月)だが、それから約16年も経った2017年頃から突然、それまで全く聞かれることのなかった「1988年に起きた御堂筋線事件(※)をきっかけに女性専用車両が出来た」という情報がツイッター等のSNSなどで広まり、一部メディアでも取り上げられた。
御堂筋線事件を受けて活動していた「性暴力を許さない女の会」という団体が鉄道事業者に強く働きかけてて女性専用車両を実現させたというのだ。
事件自体は悪質だが、それを女性専用車両が出来たきっかけとするのはあまりにも無理がある。
そもそも
- 御堂筋線事件が起きたのは先述の通り、1988年。
- 現在の女性専用車両が最初に導入されたのは事件現場になった大阪の御堂筋線ではなく、2000年に試験導入した東京の京王電鉄(御堂筋線事件から約12年も経っている上に、始まった地域が全く違う)。
- 「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけ」と、言われ出したのは2017年の暮れあたりから(京王線での導入から約16年。御堂筋線事件からだと約30年近くも経っている)。
- どの鉄道会社も女性専用車両の導入が御堂筋線事件がきっかけであることを公表していないばかりか、問い合わせても「そのような情報はありません」と回答(当会会員調べ)している。
御堂筋線事件から京王での女性専用車両の導入まで約12年もの間が空いているが、その間に「性暴力を許さない女の会」が「女性専用車両の導入に向けて粘り強く鉄道事業者と交渉した」という資料や情報が全く出てこない。
そのような活動を行っていた形跡がないのだ。
「性暴力を許さない女の会」が行っていたのは主に鉄道事業者へ「車内広告やアナウンスなどで(性暴力抑止のための)積極的なPR活動を行うこと」や「駅員(特に女性駅員)を増員し、被害があった場合は即座に対応すること」などを求めるなどの活動であり、女性専用車両を実現させるために活動していたというわけではない。
しかも女性専用車両が導入されだした頃(2000年頃)からその後の状況を調べると、
- 2000年以降、女性専用車両を推進した勢力として出てくるのは主に公明党や日本共産党などで、こちらでもやはり「性暴力を許さない女の会」の名前は出てこない。
- 「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけとなって出来た」という情報が出てきたのは2017年末頃で、それまでそのような情報は全くなかったところへ突然出てきて、あっという間にさも真実であるかのように広がった。
(もしそのような事実があるならば、女性専用車両が一斉導入されだした2005年頃から反対派の活動も活発になっていたことから、その当時に既に反対派への反論として出てきているはずである。また、これほど重要な情報が2017年まで出てこないほうがおかしい。)
御堂筋線事件 | ← この間、約12年 → | 京王で試験導入 | ← この間、約16年 → | デマが広がる | メディアなどに 取り上げられ、 デマが一気に拡散 |
「性暴力を許さない女の会」が 女性専用車両を求めて 活動した形跡はない |
2000年頃以降でも 女性専用車両推進勢力として 「性暴力を許さない女の会」は 出て来ない |
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← この間、約30年 → |
もちろん、女性専用車両の導入の本当の経緯を知っている反対派からは「それはデマである」という声がツイッター上で次々と上がった。
デマの拡散
明らかに後から発生したデマが拡散されたと思われる展開だが、インターネット上はもちろん、テレビ番組などでも「女性専用車両の導入は御堂筋線事件がきっかけ」などと流されたので、恐らく相当数の人がこのデマを信じたものと思われる。
また、「インターネットの百科事典」であるウィキぺディアにも2018年以降から女性専用車両の導入が御堂筋線事件と関係があるかのような記述がされたこと(2020年3月時点[アーカイブ]。2023年12月時点ではなし)もあり、これも『女性専用車両の導入は御堂筋線事件がきっかけ』というデマを多くの人が信じる原因になっていると思われる。
ウィキぺディアは便利だし、その内容は正確であれば非常に役に立つが、一方で登録している人なら誰でも自由に編集できることから、その気になれば悪意を持った人間が真っ赤な嘘を書きこむことも可能なものであることに気をつける必要がある。
女性専用車両が導入された本当の理由
当会サイトを以前からご覧くださっている方ならすでにご存知かと思うが、現在の女性専用車両が導入された背景には、先述の通り公明党など一部の政党や政治家からの強力な政治的圧力があった。
もちろんこれは御堂筋線事件の言説と違ってきちんとした証拠が多数残っているし、また公明党は今でも「私達が女性専用車両を実現しました!」とアピールし続けている。
この公明党のサイトにも『性暴力を許さない女の会』のことは一切出てこない。
つまり、『性暴力を許さない女の会』の活躍で公明党が動き出し、鉄道事業者に働きかけたというシナリオも見えてこないのである。
女性専用車両は実際には一部の政党・政治家の選挙戦略や実績作りに利用されているのであって、決して正義の車両とは言えない代物なのだが、それが世間では表向き『痴漢対策』ということになっていて、本来の同じ運賃を支払えば誰でも平等に利用できなければならないはずの公共交通機関に「やむを得ない措置」として導入されたという建前になっているのである。
ちなみに、インターネット上では「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけとなって出来た」というデマを信じる者(主に賛成派)はいても、「女性専用車両は公明党が鉄道事業者に働きかけたことで出来た」という事実を信じる者は反対派以外には皆無なので、公明党の女性専用車両をめぐる動きは全く世間に認知されていないため、実績になっていないものと思われる。
特に各都市の公営鉄道事業者や首都圏の私鉄などでの女性専用車両導入は政治的な色彩が濃い。
各都市の市議会議事録を見ていると、公明党や日本共産党の議員が交通局に対して執拗に女性専用車両の導入を迫っているし、また関東では2005年の5月に首都圏のほとんどの鉄道事業者が同時に女性専用車両を新たに導入、または拡大している(2005年の首都圏一斉導入)。
そして、その首都圏一斉導入の元になったのが当時の国土交通省が鉄道事業者の幹部を集めて実施していた「女性等に配慮した車両の導入促進に関する協議会(第1回)(第2回)(第3回)」である。
国土交通省がこのようなものを数度にわたって実施したため、朝ラッシュ時の安全確保の問題や男性客からの反発が予想されることなどから導入を渋っていた当時の鉄道事業者も導入を拒否できない状況になり、結局導入さぜるを得なくなったのである。
そして、その国土交通省に女性専用車両の導入を推進するよう、公明党の支持母体である創価学会の婦人部(現・女性部)より約7万6千筆の署名を集めて、当時の北側一雄国土交通大臣に提出していたのも公明党である。
なお、公明党は現在でも女性専用車両を守るため、国土交通大臣ポストに拘っている模様である(自公政権では国土交通大臣は常に公明党議員の指定ポストになっている)。
こうしてみると、女性専用車両を導入させるために政権与党の政党がその組織力をもって、全国的規模で大々的に活動した結果、導入を渋る鉄道事業者を押し切る形で女性専用車両が導入されたのが分かる。
その後、他社局での導入を見て公明党の影響が薄かった鉄道事業者でも「他社がやっているから当社でも…」という、横並び意識で女性専用車両を導入するところが次々現れ、今では主要な都市圏の鉄道路線の多くで、当たり前のように女性専用車両が存在しているという状況になっているのである。
「御堂筋線事件を受けて活動していた正義の市民団体が健気に頑張った結果」では全くないのだ。
デマが発生し、広がった経緯について
では、なぜこういうデマが広がったのか、その根源は何かということについて考察してみたい。
ツイッターで過去の情報をさかのぼると
- 「御堂筋線事件がきっかけ」であると盛んにツイートが飛び交うようになりだしたのが2018年の2月ごろから。
- 「御堂筋線事件がきっかけ」というツイートが出始めたのはさらにその少し前の2017年の年末あたりから。
である。
「『御堂筋線事件が女性専用車両のきっかけ』だとした、最初のネット投稿はいつ頃か?」と調べを進めたところ、2017年の11月にマストドンと呼ばれるSNSに以下のような投稿がなされていたことが分かった。
あまり知られてないみたいだけど、女性専用車両が設置されるようになったのは「地下鉄御堂筋事件」がきっかけ。
痴漢に気がついて勇気を出して注意した女性が付け回されてレイプされてしまった事件。
この事件に危機感を持った女性たちが集まって「性暴力を許さない女の会」というのが発足し、大阪市交通局と粘り強く交渉、対処療法的に女性専用車両が導入されたそう。
(中略)
その後もアナウンスの内容など粘り強く交渉して女性専用車両の設置されたのは事件から12年も経ってから。
経緯を知ると「男性差別」じゃないのがよくわかる。
この投稿主(以後「2017年11月の投稿主」とする)は「性暴力を許さない女の会が大阪市交通局と粘り強く交渉して、女性専用車両が導入された」と言っているが、実際には2000年を過ぎて(つまり御堂筋線事件から約12年経ってから)、大阪市議会で井出勝子氏や児玉隆子氏を中心とする公明党議員たちが当時の大阪市交通局長に女性専用車両の導入を迫り、女性専用車両の導入を渋っていた当時の交通局長が折れる形で女性専用車両の導入が決まったものである。
これは当時の大阪市議会の議事録にも記録が残っている。
つまり、『性暴力を許さない女の会』の活動とは全く別に公明党が交通局長相手にごり押しした結果、痴漢対策を表向きの理由とした女性専用車両が導入されたのである。
話をもとに戻して・・・
2017年11月の投稿からさらに遡ると、その前年である2016年3月にライターの小川たまか氏が御堂筋線事件と性暴力を許さない女の会の活動についての記事を出している。
「痴漢は犯罪」ポスターが生まれるまで 大阪「性暴力を許さない女の会」の28年
この記事では御堂筋線事件とそれを受けて発足した『性暴力を許さない女の会』の活動について、かなり詳しく記載されている。つまり小川氏は『性暴力を許さない女の会』の活動については【事情通】と言えるが、その小川氏も「御堂筋線事件がきっかけで女性専用車両が出来た」などとは一言も言っていない。
さらに、小川氏は後に発表した別の記事でこのように述べている。
「地下鉄御堂筋線事件」については以前記事を書いたことがありますが、この事件がきっかけで女性専用車両が導入されたとは聞いたことがありません。
1988年の事件をきっかけに12年後の2000年の導入につながったというのは、いくら性被害の対応が遅い国といっても無理がありませんか。
番組制作者は「女同士のバトル」がお好き? ミソジニーまみれの女性専用車両バッシング(小川たまか) - エキスパート - Yahoo!ニュース1月15日、ツイッターの「日本のトレンド」に「あぶらとり紙」が載りました。突如現れた「あぶらとり紙」というキーワード。これは一体、何を意味しているのでしょう。 「あぶらとり紙」についてツイートしてい
ご覧の通り【事情通】の小川氏が『御堂筋線事件起源説』を完全に否定している。
つまり、2017年11月の投稿主は思い込みで『女性専用車両の導入は御堂筋線事件がきっかけ』とネット(マストドン)に投稿し、拡散してしまったわけだ。
『女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけ』などとというデマが大きく拡散されることになった最初の【発火点】は恐らくこの辺りであろう。
デマの発生源となった、大阪府人権局の資料
では、なぜその2017年11月の投稿主はそのような思い込みをしてしまったのだろうか?
以下に紹介するのは大阪府人権局が2016年に出した資料だが、性暴力を許さない女の会の活動が女性専用車両の導入につながったと取れる記述をしており、どうやら「2017年11月の投稿主」はこの大阪府人権局のこのページを見て「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけで導入された」と思い込んだと推測される。
それからも活動は継続され、5年後の93年、同会は「セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる」と協力して「STOP痴漢アンケート」を実施し、交通局や私鉄各社への働きかけを行いました。そんな中で、社会的な機運も強まり、大阪の鉄道警察隊がようやく痴漢対策に力を入れるようになってきました。その結果、「痴漢アカン」という、加害者に対するメッセージの含まれた初のポスターや、電車での車内放送なども実現するようになり、2000年以降には女性専用車両の導入が始まりました。
また、女性専用車両も「痴漢をなくす為の積極的な取組み」というより、対処療法でしかありません。
このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ
http://www.pref.osaka.lg.jp/jinken/work/kyozai6_05_09.html(アーカイブ)
この資料で『女性専用車両も「痴漢をなくす為の積極的な取組み」というより、対処療法でしかありません。』と記載されているのと、「2017年11月の投稿主」が「対処療法的に女性専用車両が導入されたそう」と自らSNSに投稿した中で発言していることを見比べても、やはり2017年11月の投稿主がこれを読んでいた可能性が高いと思われる。
しかしながら、『性暴力を許さない女の会の活動によって、女性専用車両が導入された』とする資料が上記の2016年の大阪府人権局の資料より以前には見つからない。
もし本当に御堂筋線事件がきっかけで女性専用車両が出来たのなら、2002年に御堂筋線で女性専用車両が導入された以前から大々的に御堂筋線事件のことが言われていたはずである。
なぜなら、その事件を世間に広く知らせれば、当時よりいた女性専用車両に疑問を持つ市民(後の反対派)には「そういう事情なら仕方がない」と思わせ、より反対派になる市民を減らせただろうし、それでも反対派の人への女性専用車両賛成派からのバッシングももっと強くでき、それによって反対派の活動もずっと抑制できたかもしれないからだ。
御堂筋線事件から29年、御堂筋線に女性専用車両が導入されてから15年も経った2017年になって初めて「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけである」などと言われ出すのは、どう考えても辻褄が合わないだろう。
また後に判明したことだが、肝心の『性暴力を許さない女の会』自体が、女性専用車両が御堂筋線事件がきっかけで出来たとする『御堂筋線事件起源説』を全面的に否定している(詳細はこのすぐ下「御堂筋線がきっかけではない決定的証拠」の項で後述)。
つまり、御堂筋線事件を受けて女性専用車両を実現させたとされる当事者が全面否定しているのだからもはや議論の余地はないだろう。
大阪府人権局の資料についても人権局の関係者が(恐らくは思い込みで)女性専用車両の導入と『性暴力を許さない女の会』の活動を勝手に結び付けてしまった可能性が高いと推測される。
「御堂筋線事件がきっかけ」ではない決定的証拠
先ほどライターの小川たまか氏が
1988年の事件をきっかけに12年後の2000年の導入につながったというのは、いくら性被害の対応が遅い国といっても無理がありませんか。
と述べていたという話をしたが、実は『女性専用車両の導入は御堂筋線事件がきっかけ』を否定する人は小川氏だけではない。
小川氏のほかにもフェミニストの牧野雅子氏がこのような内容を発表している。
論より証拠である。
まずはお読みいただきたい。
ツイッター上で、女性専用車両は地下鉄御堂筋線事件が「きっかけ」で導入されたと言っている人が目に付く。わたしはこれに全く同意できない。「きっかけ」というからには、時間的接着性があるはずだ。地下鉄御堂筋線事件が起きたのは1988年。女性専用車両の試験導入は2000年暮れ、しかも、東京だ。大阪では、2002年にJR西日本が試験運行したのが最初である。御堂筋線事件が「きっかけ」ならば、事件から遠くない時期に、御堂筋線にまず導入されていたはずだ。
2018年に、地下鉄御堂筋線事件を機に発足した「性暴力を許さない女の会」の方たちにお話を伺った時のこと。女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけだったと言っている人がいるんですよ、と言ったなら、一笑に付された。時期が違う、と。そりゃそうだ。事件から干支が一回り以上(古い言い方でごめんなさいよ)たってからの導入を、事件がきっかけだったというのはあまりにも杜撰だ。
https://www.lovepiececlub.com/column/14065.html?fbclid=IwAR2MaeuWQS0Tkf-Eq7lXqQMEHQG8FvRpf8xcOaIBocTxxXIxh3vHgoGmnmg
上記の通り、性暴力を許さない女の会に「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけと言っている人がいると言ったら一笑に付された」とのこと。
「女性専用車両は御堂筋線事件がきっかけで出来た」などと言っている人は上記の引用文をじっくり3回読み返していただきたい。
「デマが否定されたから終わり」ではない
しかしながら、【女性専用車両と御堂筋線事件の関わり】は否定されたものの、その一方で女性専用車両が「社会を変えようと戦った女性たちが勝ち取った正義の車両である」という世間の思い込みはまだまだこの先も続くだろう。
あくまで「御堂筋線事件との関わりが否定されただけ」である。
実際には『性暴力から女性を守るための正義の車両』でもなければ、『社会を変えようと動いた女性たちの執念が実ったもの』でもなく、公明党などの政党が選挙戦略や自らの実績作りのために鉄道事業者に圧力をかけて実現させたものである。
現在でも選挙などがあるたびに公明党が「私達が女性専用車両を実現しました」とアピールしていることからもそれはお分かりいただけるだろう。
さらに鉄道事業者も女性専用車両を客寄せアピールに使ったり、女性専用車両限定で女性向け広告を割高な広告料で募集するなど、女性専用車両を営利目的に利用しており、決して性犯罪被害者を守るために女性専用車両をやっているのではない。
痴漢がなくなったからといって、女性専用車両がなくなるわけではないのだ。
その根拠に今ではどの鉄道会社も痴漢の認知件数を公表していない。
これでは私達がその路線で実際に痴漢がなくなったか(減っているか)どうかを知る術がない。
「女性専用車両をなくしたいんだったら痴漢をゼロにすればいい」などと言う者に聞きたい。こういう状況で痴漢がなくなったことを我々市民はどうやって知ることが出来るのか?仮に痴漢がなくなったことを知れたとして、痴漢対策として女性専用車両が導入されているという前提において鉄道事業者が「今後も痴漢が発生することはないだろう」と見越して女性専用車両をやめると思うのか?(2000年代初頭ならいざ知らず、現在はSNSも発達していることから一度やめた女性専用車両を再開することは困難(定着しない)と思われる)
これらのことを良く考えてみればいいのである。
視点を変えて言えば「防犯カメラをなくしたいんだったら万引きをゼロにすればいい」と言えるのかどうか考えてみればわかるだろう。
万引きがなくなったからといって防犯カメラを撤去した店など聞いたことがない。
当会は「女性専用車両が女性を守るために作られた、というのは真っ赤なウソである」と主張してきた。
しかし、賛成派が「御堂筋線事件という悲惨な出来ごとを受けて、女性たちが戦ってきた結果、女性専用車両は実現した」と言えばもっともらしく聞こえるし、また反対派の「女性専用車両は女性を守るためのものではない」「痴漢対策は建前である」「男性への差別である」という主張を無力化し、女性専用車両を正当化するのにも「女性専用車両の導入は御堂筋線事件がきっかけ」とするのは賛成派にとって実に都合がいい。
しかしながら、これは女性専用車両が導入され始めた当時のことを知る反対派たちが「これはデマである」と異を唱え、詳細な検証を行うことにより、デマであることがほぼ証明された。
しかし、賛成派やマスコミがこの先も「女性専用車両は女性たちが性暴力被害者を守るため、社会を変えようとして執念で実現させた正義の車両」というイメージを流し続けるであろうことは想像に難くない。
当会は決して痴漢対策・防犯対策自体に反対するものではない。
しかし、痴漢対策・防犯対策を口実にした【性別】という、本人の意思や努力ではどうすることも出来ない【生来属性】(特にわかりやすいのは【人種】だろうか)による公共の場での差別には断固反対する。
ひとことで言って「痴漢対策は建前」なわけだが、もう少し詳しくまとめると以下のような事実がマスコミ等によって完全に黙殺されているのである。
- 公明党や日本共産党など一部政党が自らの選挙戦略や実績作りのため、鉄道事業者に圧力をかけてごり押しで女性専用車両を導入させたこと。
(痴漢対策はただの建前。しかし世間は痴漢対策のために設けられた正当な車両だと思っている) - 広告料が割高な「女性専用車両限定広告」など、女性専用車両が鉄道事業者の金儲けの手段になっていること。
(痴漢をゼロにしても女性専用車両はなくならないし、また鉄道事業者は痴漢被害者のことを思って女性専用車両をやっているのではない) - 痴漢対策と言いながら、女性専用車両導入後でも実は痴漢が減っていない(当然、男性の痴漢冤罪防止にもならない)こと。
(「痴漢が減らないから考え直す」のではなく、都合の悪いことは隠蔽しながら、さらに女性専用車両を推進してきた鉄道事業者と、それを伝えないマスコミ) - 男性の高齢者や障がい者など、本来優先されなければならない交通弱者より、健常者の女性が優先されていること。
(男性の障がい者は乗車可能としておきながら、実際には障がい者であっても出来るだけ男性は乗せないようにしている。また、子連れの父親も女性専用車両には実質乗れないというのも女性専用車両が本当に痴漢対策だとしたらおかしな話) - 「性の多様性」が謳われて現代において、「男性に見える乗客」のみを特定空間から排除していること。
(憲法14条において性別による差別は禁止されているため、本当に「女性専用」には出来ず、形だけ「任意協力」にしてそれを知らせずに「女性専用車両」という強制力があるかのような名前にして、半ばウソをつく形で事実上、男性に見える乗客のみを排除している) - JR埼京線で痴漢6割減の実績がある防犯カメラなど、他に有効な手段がいろいろあること。
また、当会をはじめとする反対派が防犯カメラや私服警官の付き添い乗車などを提唱していること。
(女性専用車両が絶対唯一の痴漢対策であるかのような報道&「反対派が代案も出さず、痴漢対策である女性専用車両にただ反対だけしている」と思わせる印象操作)
その他、「女性専用の空間ならば絶対の安心が保たれる」という無根拠な思い込みが蔓延していることや鉄道事業者が表向き痴漢対策と言いつつ、実際は女性客からクレームされないために男性を可能な限り乗せないことに懸命になっていること(=痴漢対策と言いつつ、実際にはただの女性向け優遇サービスと化している)なども問題だが、近年ではそれらの「賛成派・推進派にとって都合の悪い事実や情報」がマスコミなどによって完全に黙殺された上で、世間では「女性を性暴力から守るための車両に差別だと難癖をつけている連中がいる」ということにされているのが現状ではないかと思われる。
そういった意味でも私達は社会に真実を伝えていく必要がある。
「女性専用車両が出来たのは性暴力に対する社会の理解が進んで来たからではなく、単に政治目的に利用されただけであり、痴漢対策は建前であって女性専用車両は痴漢対策ではない」と。
その上で、差別に当たらず、抑止力をもって痴漢を減らす、【本当の意味】での防犯対策・痴漢対策等を進めていく必要があるだろう。
さいごに
最後に、当会以外でも『女性専用車両が導入は御堂筋線事件がきっかけ』というのがデマである検証を行った記事を発見したのでここで紹介しておくことにする。
ここまで読まれた方はこちらも併せて読んでみてほしい。
※作者から許可済み