【関西】JR阪和線で非協力乗車会

活動履歴

2025年1月7日朝、JR阪和線で非協力乗車会を行いました。

JR阪和線を走る特急くろしお号の女性専用席について任意性が担保されているかを確認するためです。
以下その報告です。


天王寺駅から特急くろしおに乗車

今回はJR天王寺駅に朝7:45に集合して天王寺駅から和歌山駅まで特急くろしおの女性専用席に非協力乗車し、和歌山駅からはJR阪和線の普通や快速を乗り継いで天王寺駅まで戻ってくる予定である。

真冬のこの時期、朝7時を過ぎても太陽はまだ低く、辺りは少々薄暗い。

JR天王寺駅のすぐ向かいには日本一高いビル(まもなくその座を他に譲るが)として有名な「あべのハルカス」がある。

あべのハルカス
JR天王寺駅

もちろん今回の目的地はそちらではないのでそのままJR天王寺駅に入り、7:59発の特急くろしお1号新宮行きを待つことにした。

ホームで他の参加メンバー達と合流。私達のいるホームはそれほど混雑していなかったが線路を挟んて向かい側の大阪環状線のホームはこれから朝ラッシュ時ということもあり、徐々に混雑しはじめていた。

天王寺駅の駅標
天王寺駅ホームの様子

やがて案内放送と共に乗車予定の特急くろしおがホームに入ってきた。

特急くろしおは5号車の一部の座席が女性専用席になっている。

特急くろしおが到着

※ここからは過去記事でも述べた内容なので、すでに知っている人は次項【特急くろしお 天王寺→和歌山】まで飛ばして下さって構わない

JR西日本の女性専用席は2007年に北陸本線の特急サンダーバードで発生した暴行事件の直後、特急サンダーバードと、関西から和歌山方面に向かう特急くろしおに設置された。(後にJR神戸線の特急ラクラクはりまにも設置)

事件の直後に設置されたので防犯対策だと思われがちだが、当のJR西日本自身が「以前から要望があり、サンダーバードの事件とは直接関係ない」とマスコミを通じて発言していたこと(情報元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070823-00000923-san-soci=現在はリンク切れ)や、導入当初に女性専用席を『「あったらいいな」からできました。』などと宣伝していたことから、こちらも通勤電車の女性専用車と同じく、防犯対策の仮面を被った「女性優遇客寄せサービス」であると思われる。

JR西日本はこのとき同時に車内SOSボタンも設置している。こちらは事件を受けての対策と思われるが、女性専用席は上記の理由からおよそ防犯対策とは考えにくい。

また、女性専用席のある車両だけトイレが女性専用になっていることなどからも、やむを得ない防犯対策ではなく、女性を主眼にした客寄せサービスであることが伺える。

いわば、レディースデー的な感覚で設置されていると思われるが、一般のサービス業とは異なり、鉄道は公共交通機関である。

特急くろしお 天王寺→和歌山

列車のドアが開いたので私達はそのまま乗車した。

車内は空席が目立ち、それほど混んでいる感じではない。

5号車の一画、10数席ほどが女性専用席とされており、そこだけシートのカバーの色が違う。

私達は事前に予約していた座席に各自着席したが、周囲の乗客は特に何も言って来なかった。

指定券の券面には「女性のみ利用可」と表示されており、また特急券をネットや券売機で予約する際も「女性のお客様および同伴される小学生以下の男性のお子様に限りご利用できる座席です」と画面に表示されるが、実際は通勤車両の女性専用車と同様で何ら強制力はない。

つまり、「女性のみ利用可」は完全な虚偽なのだ。

もちろん私達が勝手に言っているのではない。国土交通省にも確認済みである(下記動画参照。音声のみ)。

しばらく停車のあと、列車は時刻通り天王寺駅を発車。

天王寺駅を発車

阪和線に入るための渡り線を通って高架に上がり、そこから先は杉本町駅付近まで大阪の市街地を高架で駆けぬける。

しばらくして、列車が鶴ヶ丘駅付近に差し掛かった辺りで車掌が突然筆者に声かけしてきた。

車掌:すみません。こちら女性専用席になっておりますが…

筆者:はい。

車掌:お客様ご自身でご予約されたものですか? 女性の方が予約されて、その方から受け取られたとかではないですか?

筆者:自分で予約しましたが…(女性専用席という名前であっても)本当は男性も利用できますよね?

車掌:はい、分かりました。

車掌はそう言って、他のメンバーには声をかけず去っていった。

やがて列車は高架から地上に下り杉本町駅を通過。その先で大和川を渡って浅香駅、続いて堺市駅を通過。

さらにおおとり駅、和泉府中駅などを通過していくうちに周囲は都会の風景から徐々に郊外の住宅地へと変わって行く。

列車は再び高架に上がり東岸和田駅を通過。だんじりで有名な岸和田市の駅である。

東岸和田駅を通過

再び地上に下りて熊取駅を通過し、次の停車駅の日根野に到着。

日根野は大阪府泉佐野市にある駅で、元々は特急はおろか快速列車にも通過されてしまう小駅だったが、平成6年に関西空港が開港したことで関西空港へ向かうJR関西空港線がここから分岐するようになったため、快速はもちろん特急も(一部を除き)停車するようになったという、関西空港のおかげで「大出世」した駅である。

日根野駅に停車

日根野駅を出ると次の停車駅は和歌山である。

和泉砂川駅付近まで来ると沿線には田畑の向こうに山が見えるような長閑のどかな風景が広がる。

さらにそこを過ぎて和泉鳥取駅あたりから線路は南に進路を変え、山越えにかかる。

阪和自動車道と交差しながら深い山の中へ入り、山中渓やまなかだに駅を通過。

その先で大阪府から和歌山県に入る。

のどかな風景が広がる(和泉砂川駅付近)
山中に入って大阪と和歌山の県境を越える(山中渓駅付近)

やがて和歌山の街並みを見おろしながら徐々に高度を下げ、紀伊駅、六十谷むそた駅、紀伊中ノ島駅を通過して紀の川を鉄橋で渡るとまもなく和歌山駅である。

紀の川を鉄橋で渡る(紀伊中ノ島~和歌山間)

和歌山駅で

和歌山駅には8:46に到着。

下車してホームに降り立つと車掌が業務引継ぎをしているのが見えた。

どうやらここで車掌が交代するようだ。

そこで先ほど鶴ヶ丘駅付近での声かけについて尋ねてみた。

筆者:すみません、今ちょっとお時間良いですか?

車掌:はい。

筆者:先ほど私に声をかけられた方ですか?

車掌:はい、そうです。

筆者:(車掌が立ち止まったので)あ、歩きながらでいいですよ。さきほど声をかけられた理由はなんですか?見た目で男性と判断されたからですか?見た目男性でも、心は女性という方もいらっしゃいますし…

車掌:すみません。先程お声掛けさせていただいたのは時々女性の方が切符を購入されて、それを受け取った男性の方が知らずに乗車していることがありますので確認のために声をかけさせていただきました。

筆者:まあ、あなたに言っても仕方ないかもしれませんが、任意協力なのに「女性専用」席という名前で、しかも「女性のみ利用可能」と(券面に)表示するのは事実と違いますし、良くないんじゃないですか?

車掌:確かに表記としては女性専用ですが、事実とは異なる表示になっていますね。

ここで駅の改札口に到着したので、「お忙しいところ失礼しました」と伝えて私達は改札外に出た。

ふと思ったこと

しかしここで思ったのは「男性のお客様が知らずに座っている場合があるので確認のため声かけさせていただきました」とのことだが、もし男性が本当に知らずに座っていた場合、移動するように言うのだろうか。

ちなみに特急くろしおは全席指定で自由席はない。男性であるというだけで目的地まで立って乗車になるのだろうか?

先ほど【天王寺から特急くろしおに乗車】の項でも述べた通り、女性専用席は当のJR西日本が「サンダーバードでの事件とは関係ない」と発言するなど、防犯対策とはおよそ言えない代物である。

実際には強制力がないとはいえ「女性のみ利用可」など、実質強制であるとしか思えないような案内をしており、私達のように「実は男性が利用してもOKであること」を知っていないとまず利用できない。公共交通機関がこのようなものを設置している時点でかつてのアパルトヘイトを連想してしまう。

これでは男性に対する人権侵害だと言っても過言ではなかろう。

もちろん本当に強制したら法的にもまずいから、実際にはどんな男性でも正しい乗車券と指定席券を持っていれば座れるのだ。

しかしそこを隠して強制であるかのように装って運用し続けるのはいかがなものか…

予定を変更

和歌山駅からは快速や普通を乗り継いで天王寺駅まで帰るつもりだったがこの時間帯は和歌山駅から出る阪和線の列車には女性専用車がないことが判明した。阪和線で女性専用車があるのは6両編成の普通・快速のみで、4両編成および紀州路快速には女性専用車がない。

そこで急遽予定を変更し、和歌山9:50発京都行きの特急くろしお12号で引き返すことにした。

くろしお12号の発車まで、あと約1時間ほど時間がある。

すぐに座席の予約を済ませ、9:50まで和歌山駅で時間潰しをすることにした。

JR和歌山駅
9:50発の特急くろしお12号に乗車

特急くろしお 和歌山→天王寺

しばらく時間を潰したあと、発車時刻が近づいて来たので私達は再び改札内に入ることにした。

そしてホームでしばらく待っていると特急くろしお12号が到着。私達は乗車した。

筆者は通路側の席だったが、窓側の席はお茶のペットボトルが置いてあるだけで人はいなかった。

おそらくお手洗いに行っているのだろう。

列車はそのまま和歌山駅を発車。

しばらくして隣の席の女性客が帰って来た。何か言って来るかと少々緊張したが、特に何も言って来なかった。

やがて列車が和歌山県と大阪府の間の山間部に入ったあたりで車掌が車内を回ってきた。

さっき和歌山駅で話をしたあの車掌だ。

どうやら新宮行きのくろしおに和歌山駅まで乗務したあと、そこでしばらく休憩(?)して、折り返し新大阪・京都方面のくろしおに乗務しているらしい。

もちろん今回は何も言わずに通り過ぎて行った。

その後は特に何事もなく、次の停車駅である日根野駅を出て天王寺駅には10:33到着。

私達はここで降りてホームから京都に向けて発車していく特急くろしおを見送った。

天王寺駅で下車、列車を見送る

そして天王寺駅の改札を出たところで解散。乗車会は終了とした。

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