女性専用車両の法的見解
国土交通省の見解
下記は当会会員が国土交通省に女性専用車両の任意性について問い合わせした時の回答です。(原文のまま)
国土交通ホットラインステーションと申します。 お問い合わせ頂いた案件につきまして、鉄道局 業務課より以下の回答が来ましたので、送付いたします。 回答が大変遅くなり、申し訳ございません。 国土交通ホットラインステーション 東京都千代田区霞が関2-1-3 連絡担当 西川 TEL 03-5253-8111(代表) 03-5253-4150(直通) ********************************* 以下のとおり回答します。 現在各鉄道会社で導入されている女性専用車両については、あくまでも利用者のご理解と任意のご協力のもとに行われているものであり、法的な根拠はありません。 女性専用車両はあくまでも男性利用者の任意のご協力のもとに実施されているものであることから、実際の運用に際して、駅係員等が誤乗車された方に対して呼びかけ、ご協力をお願いすることはあると考えます。 しかしながら、強制的に降車させるような行為は不適切と判断されることから、そのような事実があれば指導して参りたい。 *********************************
鉄道営業法の有効性について
下記は差別ネットワーク、兼松信之(HN:ドクター日本)氏の見解です。
鉄道営業法の34条2項 第三十四条 制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス 一 停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ 二 婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ を根拠に、女性専用車両から男性を排除できるのか、を検証してみよう。 まず、結論から言うと「鉄道営業法の34条2項を根拠に女性専用車両から男性を排除できない」と思われる。 その理由は現行憲法に反するからである。 現行憲法の下では運賃さえ支払えば「誰でも、どの車両に、自由に乗れる」ことが保障されている。であるならば、なぜ現行憲法に反する条項が鉄道営業法に存在するのか? それは、鉄道営業法は現行憲法ができるずっと以前(明治33年)に制定された法律だからである。 ご承知の通り、憲法98条1項には 第九十八条 1 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 とあり、「憲法に反する法律(の一部)は、効力を有しない」のであって、鉄道営業法34条2項はこれにあたる、と思われる。 それでは、鉄道営業法34条2項は現行憲法のどの条項に反するのか? それは、「基本的人権」と「自由権」を保障する11条及び13条、そして「性別による差別」を禁止する14条1項に反する、と思われる。 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 第十四条 1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 もし、女性専用車両に男性が単に乗車していたにもかかわらず、駅員や警察官(その他、女性客等誰でも)がその男性を無理矢理降車させようとすれば刑法223条「強要罪」にあたる可能性が高い。 刑法第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。 ただし、現行憲法の12条 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 にあるように「自由権の濫用」は許されない。 よって、女性専用車両に男性が単に乗車することは何ら問題はない」が電車内で演説や示威行為をすることは許されない。 もし、そのような行為をすれば鉄道営業法35条 第三十五条 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ車内、停車場其ノ他鉄道地内ニ於テ旅客又ハ公衆ニ対シ寄附ヲ請ヒ、物品ノ購買ヲ求メ、物品ヲ配付シ其ノ他演説勧誘等ノ所為ヲ為シタル者ハ科料ニ処ス を根拠に、駅員や警察官に降車を命じられても文句は言えない。 要するに、現行憲法下においては鉄道営業法35条は有効であるが、同34条2項は有効とは言えないのである。 すなわち、電車(女性専用車両)内で演説をしたり、これ見よがしに印刷物を掲示したりすればその行為を理由に降車させられても文句は言えないが、男性でも女性専用車両に単に乗車している分には何ら問題はない。 逆に、強制的に降車させればそれが法律違反(強要罪)に問われかねない、ということである。 なお、国交省や各鉄道会社もそう考えているからこそ問い合わせると「女性専用車両には男性も乗れます」と(いう趣旨のことを)答えるのである。