日本だけでなく、海外でも女性専用車両を導入・拡大しようという動きがあちらこちらで見られるが、ブラジルのサンパウロでは地下鉄と郊外電車に女性専用車両の設置を義務付ける法案をサンパウロ州議会が可決したものの、これをサンパウロ州のジェラルド・アルキミン州知事が棄却するという出来事があった。
今回のこの法案は「女性専用車両の設置は、女性に対するセクハラ対策が目的」とのことだが、さてどこまで本当なのか?
以前、当ニュースで取り上げたインドネシアの女性専用車両もセクハラ対策と言いつつ、実際には報道によって理由がまちまちであったり、日本でも女性専用車両をごり押しする政党があり、女性専用車両が政治目的に利用されているふしがあるが、今回のサンパウロ州の法案については以前から賛否両論があり、議会での可決後には市民による反対運動も起こっていたとのこと。
アルキミン州知事は棄却の理由について、「既に女性警備員を増員して513人が警備にあたっており、またすべての駅に監視カメラを設置している。将来的には全ての車両にも設置予定だ。法案の意図は十分に理解しているが、女性だけを分けるのは適切な方法ではない」と説明した。
日本でも、監視カメラは2009年にJR埼京線で実際に導入され、痴漢が多いことで有名だった埼京線の痴漢件数を6割も減少させるという実績を残しているが、日本の各鉄道事業者は何かと理由をつけて監視カメラをやりたがらず、その後も痴漢件数の減らない女性専用車両を引き続き導入・拡大したところが少なくない。
さらに一部の鉄道事業者は女性専用車両に女性専用車両限定広告を募集し、割高な広告料で女性専用車両を収入源にしているという現状がある。
それから考えれば、防犯対策は警備員の増員や駅・車内の監視カメラで対応し、女性専用車両というアパルトヘイトまがいの政策はきっちりと棄却した今回のアルキミン・サンパウロ州知事の対応は極めて真っ当なものだと言えよう。
情報元:サンパウロ新聞(現在はリンク切れ)